企業情報

CSR指標
株式会社にんじんの指標グラフ図
商号 株式会社にんじん
会社設立日 1986年2月24日(活動開始) 1991年11月13日(法人化)
代表取締役 伊勢戸由紀
本社所在地 〒485-0029 愛知県小牧市中央二丁目246
資本金 1,000万円 (H16.1.1 現在)
事業内容 有機栽培・無農薬栽培・低農薬栽培農産物・無添加食品の宅配・販売業・店舗運営
従業員数 役員4名、社員5名、準社員4名、パート24名 合計36名 (H20.12.01 現在)

CSRの取り組み内容

“食”を通して生活を見直そう

普通、CSRの取材というと、「何、それ?」と問われることもある。「企業の社会的責任」なんてことを言おうものなら、逆に警戒されてしまうこともある。しかし、伊勢戸社長は「是非いらっしゃい」という姿勢で、当たり前のように迎えてくれた。

なぜこんなに普通なのか?(株)にんじんは、その設立の経緯から実際に行っている事業まで、なんら社会に対して恥じることなど無いからだ。「食を通して生活を見直そう」。そのことに対して苦しみながらも真剣に取り組んでいらっしゃる。(株)にんじんのCSR活動は、事業そのものなのだ。

 

畑と台所をつなぐ

にんじん_トラック.jpg

(株)にんじんの中心となる事業は、有機農産物を会員に宅配する事業だ。今でこそ生協も個配送しているが、この手の事業を東海地域で最初に取り組んだのが同社なのである。もちろん、ただ宅配するだけではない。

 今の世の中、普通に生活をしていては、野菜やお米がどこでどうつくられているのかが分からなくな ってしまった。スーパーに行けば何でも揃っていて、旬なんてあったものじゃない。そんなライフスタイルに慣れきってしまった現代では、農家はただ売るためだけに野菜をつくり、消費者はただ安いものを探し求める。結局その結果、食の安全が脅かされてしまっているのは、皆さんご承知の通り。

このまま放ってはいけない。危惧する農家や消費者は、ずっと以前からいたのである。(株)にんじんは20年以上も前にそのような農家と消費者の双方をまとめ上げ、つなげることを行ってきた。農家(畑)と消費者(台所)をつなぐ努力は、単なる食材の配送にとどまらない。野菜等の宅配に合わせて、商品カタログ「シュン」と通信誌「畑と台所をつなぐ」を送っている。ここには生産者からのメッセージが載っていたりする。また、スーパーで買うのとは違い、時には調理したこともないような野菜が届くこともある。そんな時に困らぬよう、食材の調理方法なども紹介されていたりする。旬を感じながら、料理の腕も磨かれるわけだ。

また、実際に畑や田んぼに行き、一緒に田畑仕事を体験できるツアーも企画してくれている。いつも送られてくる野菜やお米が、どんなところで、どんな人によって作られているのかが分かると、調理するときの気持ちもなぜか変わってくるもの。「このにんじんは、誰々さんのとこのものよ」と、ついつい自慢したくもなる。

 

日本の食文化を守る食育

今、日本の農家は、減少と高齢化が激しく進んでいる。しかも野菜の品種が効率化で画一化されていき、昔あった地域独特の品種の野菜などが、生産者がいなくなっては消滅していっているのだ。それと呼応してか、日本の食文化は貧しくなっていく一方だ。

にんじん_箱膳.JPG

そんな中、(株)にんじんでは食育にも力を入れている。そのうちの一つが「箱膳」と呼ばれるもの。「箱膳」は、江戸時代から伝わる日本の食文化で、箱の中に一人分の茶碗と汁碗、小皿、箸が入っており、蓋を裏返した上にそれらを並べ、その土地で採れた作物を使った料理を、食べる量のみよそっていただくものだ。(木村拓哉主演・山田洋次監督の『武士の一分』に出てきたのが箱膳だ。) 箱膳は、日本人が元々もっていたエコロジーな知恵(もったいない精神)がつまった食事スタイルなのだ。

その他にも、講演会やイベント、社員の研修などにも力を入れている。このような活動を通じて、日本の伝統文化と、そもそもその伝統が持つ循環型の思想とを今に伝え、これからの時代もずっと安全な食が営まれる環境を維持しようとし続けているのだ。

 

その他

環境への取り組み

・ダンボールや資材、乾燥生ゴミの回収など

地域への取り組み

・地元での朝市の開催、清掃活動など


2009年3月ソーシャルビジネス55選に選出

CSRに関わる経緯・動機

東海地域の環境市民活動の草分け的存在である『中部リサイクル運動市民の会』の活動の中で、市民から「農薬や化学肥料を使用していない安全な野菜が欲しい」という声があることを知った。一方で無農薬や有機栽培で野菜をつくっている中部地域の農家からは「せっかくの安全な野菜が、規格が合わなかったり、見栄えがよくなかったりで、売り先がない」という声が上がった。そこで名古屋の主婦達と当時のスタッフが中心となって、(株)にんじんの前身となる『有機農業生産者ネットワークの会』を立ち上げたのが1984年。農家がつくる無農薬有機野菜を都市部の自然食品店や消費者家族に直送したり、スーパーの駐車場で青空市などの活動を始めた。

にんじん_体験.jpg

この活動により生産者と消費者のつながりを生み出した同会は、さらに活動を押し進めようと、「畑と台所をつなぐ」というモットーのもと、1986年「にんじんCLUB」というセクションを生んだ。単に消費者が無農薬有機野菜を産地から直接受け取るだけでなく、産地見学をしたり、畑仕事を手伝ったり、食に関する学習会をしたりすることで、消費者自身が自分のライフスタイルを見直すきっかけづくりを同時に仕掛ける活動も開始した。最初は消費者50名でスタートし、本格的な事業活動を始める。その後活動を発展させる形で、1991年に『株式会社にんじん』を設立。取り扱い品目の増加とニーズの多様化に合わせてセンター詰め合わせ方式を導入し、現事業の基礎を築く。

 

企業としてCSRが成り立つには

 

消費者の理解あっての事業

にんじん_秋の朝市.jpg50名の会員でスタートした事業も、2009年現在は約1,700名。会員が増えた今でも一人一人の会員とのコミュニケーションを大事にしていることには変わりない。

とはいえ会員も様々。発足当初の1980年代後半は、安全な野菜が食べられるというだけで価値があって、喜ばれもした。不揃いな野菜に対して理解を示す会員も多かった。しかし、今ではあの頃と社会環境も変わり、会員のニーズも多様化している。

 

「財布の紐と有機農業への理解は別ですからねぇ」

と伊勢戸さん。新しく会員になるお客さんは、必ずしも有機農作物の理解があるわけではない。不揃いな野菜や、融通の付きにくい宅配システムには、ついつい文句を言いたくなる会員も。有機・無農薬にこだわりながら、会員のニーズを満たすことは大変なこと。実際に入会してくる会員の全てが継続してくれるわけではなく、退会される会員も後を絶たない。ニーズにあった商品開発と同時に、会員獲得も欠かすことのできない活動であり、それ相応の経費もかかってしまうのだそう。理念の実現と資金面のバランスは、CSR企業として悩み深きところでもある。

 

 

生産者あっての事業 

  にんじん_宅配野菜.jpgにんじん_農家.jpgいくら消費者 が安全な食を求めたとしても、それを生産できる生産者がいなければ(株)にんじんの事業はそもそも成り立たない。しかし今、そのような生産者は数が激減してきており、今いる生産者も高齢化が進んでいる。実は今、生産者の育成こそが急務なのである。しかし生産者には経済面などの不安も多く、成り 手がなかなか出てこない。そこで(株)にんじんでは、若者が生産者になり たいという声があれば、有機農業生産者の研修受け入れの仲介役も行っている。また、生産を安定して支援できる形態として、次世代BOXという仕組みで、あらかじめ1年間で必要な野菜や果物の作付量を決めておくのである。 また賞味期間の短い加工品は、受注生産を行っている。生産者に発注してから作ってもらい、発注したものを全て買い取る仕組みである。そのことにより、生産者が安心して農作業に取り組め、加工品者はロスなく生産ができる環境を作り出せるように、心がけている。

今後のビジョン

伊勢戸さんに将来のビジョンを聞いたところ、とても意外な答えが帰ってきた。それは、

「私たちが不要な社会になっていること」

だそうだ。(株)にんじんの想いは、創業時から変わらず「“食”を通して生活を見直そう」というもの。つまりこういうことらしい。

「消費者が食生活を見直して、生産者と顔の見える形でつながってしまえば、当社の事業は要らなくなりますよね。それが究極の形じゃないでしょうか。私たちは目標を達成できたのだから流通は解散して、次は、地域農業の活性化や再生など、もっと地域で密着した動きを自ら興せる日が来るのを楽しみにしてます。」

しかし、現実の社会はその逆に進んでいると危惧しているのだそう。

「環境の変化で、私たちが納得できるような安全な農産物が生産しにくくなってきています。遺伝子組換作物もいつの間にか急増しているし、地元でしか作られていない品種の野菜も消滅しようとしているのです。」

それでも、

「私たちは、売上が上がると分かっていても、オーガニックでないものは扱いません。」

このこだわりこそが、持続可能な社会へのシフトチェンジを産む原動力となることを期待したい。

 

社員、地域の声

社員の声

営業で会員の声を聞いています。以前勤めていた所では、会員対応のために「クレーム課」という部署があったほどで、マニュアル的な対応をしていているところでした。ここでは会員一人一人の声に耳を傾け、個別に対応を変えています。大変ですが、会員から「にんじんの商品でないと嫌だから」という声を聞くと嬉しいものです。 :社員 Hさん(男性)
アルバイトで入って半年経ちました。毎週配送する荷に同封する商品カタログ『シュン』をつくっています。以前から食に関心があったのですが、にんじんで学べることは多く、今では「どうして今まで知らなかったのだろう」と思うくらいです。『シュン』を通じて、ぜひ生産者の気持ちを届けたいと思っています。 :社員(アルバイト) Mさん(女性)
農的な暮らしに関心があり、農家とのつながりが深いにんじんで働いています。今の都会での暮らしは農の現場から離れすぎてしまって、生活の実感が感じられない中途半端な暮らしになっているのではないかと、自分自身も感じています。生活そのものが肌身に感じられる世の中にしていく必要があるのではないでしょうか。にんじんを通じて、モノだけでなく、人の想いも同時に伝えて、人と人の関係が深まるような世の中にしていきたいと思っています。  :社員 Iさん(男性)

 

地域の声

にんじん_コルティーレ.jpg(株)にんじんがある小牧で、イタリアンレストランをしています。最初、スタッフの方達はお客さんとして当店を利用してくれていまして、その後、同社主催の朝市などでパンを販売させていただくなどの関係がありましたが、野菜などの宅配は使っていませんでした。

 

にんじんさんが忘年会として当店を貸し切っていただいた時、初めて同社の野菜を使って料理させていただいたのですが、その時は本当にびっくりしました。こんなに野菜の味がするなんて!実はそれまで、ニンジンの甘みを出せなくなって来ていることに悩んでいました。いくら料理の腕を磨いておいしくならないのです。実は素材そのものに問題があったとは。普通にスーパーで仕入れるものとこれほど味が違うとは全く思っていなかったのです。

それからはにんじんさんの野菜も含め、オーガニックにこだわるようになりました。おかげでお客さんにも好評で、逆にお客さんからも様々な情報をいただけるようになり、とても感謝しています。 :顧客 Trattoria Cortile(トラットリア・コルティーレ)