「納屋橋ジェラート」に込めた会社の原点

「納屋橋ジェラート」に込めた会社の原点
「納屋橋まんじゅう」といえば、名古屋で知らない人はいない定番の和菓子。ほのかなお酒の香りと上品な甘さが多くの人に愛されている。古くは大正時代から名古屋・大須に店を構え、最近ではジェイアール名古屋タカシマヤにも新しい店舗を開いた納屋橋饅頭万松庵。営業部次長、中島健一朗さんに同社の取り組みについてお話をうかがった。企業情報
商号 | 合名会社 納屋橋饅頭万松庵 |
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会社設立日 | 大正8年4月1日 |
代表取締役 | 中島康博 |
本社所在地 | 名古屋市中区大須2丁目6番11号 |
資本金 | 950万円 |
事業内容 | 和菓子の製造・販売 |
従業員数 | 32名 |
CSRの取り組み内容
「もったない」という思いから生まれた「納屋橋ジェラート」
納屋橋まんじゅうは、もち米と米麹を合わせ酵母で発酵させることでまんじゅうの皮をもっちり

と仕上げることが特長だ。しかし天然の酵母を使うため、気温や天候の影響により、全てが同じように出来上がらないことがある。「膨らみすぎたり小さすぎたりと、規格に合わないものが全体の1.5%ほど出てしまいます」。
これを何かに生かせないかと試行錯誤を重ねた結果、不揃いなまんじゅうをペースト状にすることに成功。このペーストと牛乳を合わせ、アイスクリームにしたものが『納屋橋ジェラート』だ。以前は売り物にならなかったまんじゅうから新しい商品ができた上、廃棄処分にかかるコストも削減できた。
大学生とともに新商品を考える
さらに『納屋橋ジェラート』は廃棄物処理によって発生するCO2を削減し、環境に良い影響を与えられるというメリットもある。2016年度には中部経済産業局によるJ-クレジット※普及制度事業の委託を受けた三菱UFJリサーチ&コンサルティングからの依頼で、名古屋大学で産学連携の

授業を行った。中島さんが会社と納屋橋ジェラートの概要を説明したのち、学生たちが大学生をターゲットに『納屋橋ジェラート』のプロモーション案を企画しプレゼンテーションを行った。結果として特別パッケージの『名大ジェラート』をカーボン・オフセット商品として開発し、名古屋大学内の生協や食堂で販売した。「中には発酵の力を利用した納屋橋まんじゅうの特徴をよく理解し、良い発想をする学生さんもいて驚かされました」。
CSRに関わる経緯・動機
中島さんが入社した頃、規格外のまんじゅうは全て捨てられていた。「形は良くないけれど、美味しく食べられるものなのにもったいない」。この思いから生まれたのが納屋橋ジェラートだ。しかし中島さんは、この取り組みのねらいは廃棄量の削減だけではなかったと語る。「従業員全員が『もったいない』という気持ちを大切にし、ひとつひとつの商品を尊重する丁寧な仕事を心がけてほしい、という意識をあらためて確認する機会にしたいと思っていました」。
企業としてCSR活動を継続して成り立たせるには
長く続いている企業ほど、それまでのやり方を変えるのは難しいのではないだろうか。中島さんがまんじゅうをペーストにする実験を繰り返していた頃は、他の社員もピンとこない様子だった。「ジェラートという目に見える商品になれば『なるほど』とねらいを理解してもらえるようになりました」
今後のビジョン
愛知県内を中心に約60店舗を構える同社。中島さんによれば、これからは名古屋駅など、都心部への出店に力を入れていきたいという。「人が集まるところに出店したいことに加え、工場のある大須から近い場所で売ることで、輸送のコストが下がり、CO2の排出も削減できる。何より、できたての商品をお届けすることができます。創業当時、納屋橋まんじゅうは蒸したてを店先で食べてもらうというスタイルでした。そういった意味では、納屋橋まんじゅうの原点、あるべき姿に戻っていると言えるのかもしれませんね」。