企業情報

商号 有限会社小山矢
会社設立日 1870年(明治3年)
代表取締役 小山泰平
本社所在地 愛知県岡崎市福岡町北居土47番地1
資本金 300万円
事業内容 和弓の矢の製造・卸売業及び周辺具の製造・卸売業
従業員数 29名

CSRの取り組み内容

職人的仕事から組織的仕事へ

1870年の創業から約150年間、矢の製造を続けてきた。先人たちから受け継いだ伝統や技術を尊重し、これからも大切に守っていく。しかし、職人たちの高齢化に伴い、伝統産業の衰退や技術の後継者不足など他の中小零細企業と同様の問題に危機感を抱いていた。技術を継承する担い手がいなければ事業の継続はおろか伝統も絶やしてしまうことになる。経営指針書を作成するに至った経緯は、今までの職人的な仕事のやり方を組織的な仕事のやり方に変えて行く為のものであった。理由は内部の事だけではない。同じ頃、矢を製造している他社の業績が伸びていることに

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もあった。経営指針の発表会にはパートを含めた従業員だけでなく、税理士や社労士、メインバンクといった経営に関わる人たちにも向けて行われた。小山さんが社長に就任した4年前から経営指針発表会を開くようになり、会社のこれから挑戦していく事、財務状況などを伝え、従業員からは「自社の事が理解できるようになった」という声が聞こえるようになった。その事によりみんなで知恵を出し合っていくという風土が出来上がってきている。

 

産官学連携

小山さんは2011年から愛知産業大学で「三河ものづくり学」の講師を務めている。大学3年生を対象としたこの講義では伝統産業やものづくりに纏わる内容だけでなく、就職活動や働くといったことも伝えている。愛知産業大学とは教授や有志学生たちと産官学共同開発で「矢羽根草子」という矢羽根を商品開発した。昔は鷲や鷹などの猛禽類の羽根が丈夫で良質のものとされていたが、ワシントン条約により羽根の使用が制限され、現在では七面鳥の羽根が使用されている。小山矢はその羽根を染色する技術も持っている。学生たちにはそうした歴史的な部分を伝えデザインを考案してもらった。学生たちがデザインした矢羽根は鮮やかな色彩を持つ一方で伝統的な形状を維持し、小売店などの協力も得ながら2年を掛けて商品化できるまでのものとなった。



CSRに関わる経緯・動機

産官学連携でデザイン科の学生たちと協働した際も一筋縄ではいかなかった。伝統を重んじる弓道の世界ではカラフルなデザインの矢は華美であると扱ってもらえる小売店が少なかったという。矢は三枚の羽根があることで飛ばす事ができるが、デザインだけを考えた学生たちの矢は、羽根が二枚しかない無いものや、ギザギザの形をした羽根とデザインが斬新過ぎて、“飛ばない、買われない”と実販売には難しいものになってしまったのだという。この時、小山さんは、産学連携として色んな人でアイデアを出し合い協力していく事は大切だが「誰も喜ばないモノを作って、一体、何のためにやっているのか?」と感じてしまったそうだ。人が欲しいと思える視点が無かったと感じた小山さんは、学生たちも自分たちも喜べるためにターゲットを明確にし、80本の異なるデザインの矢を学生たちに考えてもらった。そして、その80本の矢を小売店にアンケートを取り、上位の矢を製品化することに成功した。世間でも“歴女”や“武将シリーズ”など歴史ブームがあり、会社のスローガンでもある「みんなが喜ぶ」伝統を生かした商品開発に貢献する結果となった。

企業としてCSR活動を継続して成り立たせるには

自分が社長を継ぐ時、「自分がやらなければこの伝統を途切れさせてしまう」と強く感じた。経営者同士の集まりなどでは仲間たちからの質問にも正面から向き合い、嫌な事から逃げずにやっていると自負している。伝統を受け継いで行くには、事業の継続性は不可欠であり、その為にマーケティングなどの数字も細かく調査している。少子化や部活動の減少などで弓道人口は減っていると思われがちだが、実際は反対に増えており愛知県は他県に比べ弓道人口の多い地域であったり、広告は一般の広告よりも弓道専門季刊誌への掲載の方が効果が高かったりと統計的な裏付けを取ることによって経営的な効果を生み出せている。経験や勘といった憶測を鵜呑みにせず、目を背けずにやってきた事は今に繋がっている事を実感している。

社員の声

 

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元々は公務員や医療系の仕事を考えていたのですが、就職活動の時期にSNSを見ていたら新卒募集の広告を見つけ、学生時代に弓道をやっていたこともあり、弓道の道具がどのようにして作られているのか興味が湧き入社しました。パートさんが生き生きと働いている姿に、正社員の私の方が日々励まされています。先ずは日頃の鍛錬に励み、伝統技術である竹矢の仕事を受け継げるようになりたいと思っています。また、新規事業として計画している地域に密着した小売店販売を軌道に乗せられるように努めて行きます。新規事業にはとても期待しています。(正社員新卒2年目)

 

 

 

 

 

 

今後のビジョン

竹矢の技術を残し「和弓の矢」と言えば“小山矢”と思われるように、みんなに喜んでもらえる日本一の矢の会社にしたい。現在の競技用の矢の材質はアルミ製が約80%、カーボン製が約20%で、竹製のものは数%にも満たない。この数%を作る為の技術を残していることが伝統であり企業としての強みになっているのだと思う。また、弓道の世界は、都道府県や地域によって“伝統の重んじ方”が異なっており、個々の伝統の捉え方の違いが競技人口の増加や普及の難しさにも表れている。こうした課題にも積極的に取り組み弓道人口の間口を広げて行きたい。ただ伝統を守るだけではなく、維持・発展していくためには新たな分野にも挑戦していかなければならない。今は製造から小売店への卸販売までだが、先々は地元に密着した小売事業を展開していき、売上や利益を確保して技術継承をしていく考えだ。